人の営み、
私たちの生活を
潤す木材

ノッポの木、枝が広がる木、緑の葉が冬でも落ちない木など、種類によって木はそれぞれ個性的な特徴を持っている。そんな種目を人間は木材としてさまざまな形で利用している。例えば、硬くて腐らないクリは線路の枕木、軽いキリは箱やタンス、反発性が高くしなりのあるアオダモは野球のバットなどといった具合に、それぞれの特徴を活かして自然の恵みである樹木を活用している。

家具に利用する木々には、それぞれ特徴がある。木材として香りがよいスギは真っ直ぐに伸びた幹、縦に裂ける樹皮でそれがわかり、ケヤキの太い幹を見るとキメが細かく丈夫で堅いケヤキ材の家具をイメージできる。こうした幹めぐりはとても楽しい。普段、目にしている木材の木目とともに、以下それぞれの樹木と葉を紹介しよう。

森の中の樹木が木材としてどんな利用のされ方をしているのかを知り、自然の恵みを感じる。そんな感覚とともに森を散策してみれば、新たな世界観が広がってくる。

家具に使われる
「木材&樹木」の特徴


ブナ

ブナ【橅/ブナ科ブナ属/落葉広葉樹/
分布:北海道~九州】

山地に生える落葉高木で、樹高30mほどにもなる。樹皮はきめ細かく、なめらかで明るい灰色。上の写真は、花が咲く前の果実。果実の中には、栄養豊富で野生動物の好物の実が入っている。日本の温帯林を代表する樹木として有名で、日本全国で35もの市町村が市町村木に指定している。分布の北限は、北海道寿都郡黒松内町の歌才ブナ。材は硬く粘りがあり曲げることに適しているうえ、引っ張り強度が高いため、家具や木製玩具などに多く利用されている。また、スキー板や楽器の鍵盤、キノコ栽培の原木としても活用されてきた。

有名・著名なブナ:歌才ブナ自生北限地帯(北海道寿都郡黒松内町)、和泉葛城山ブナ林(大阪府貝塚市)、比婆山ブナ純林(広島県庄原市)が天然記念物


ミズナラ

ミズナラ【水楢/ブナ科コナラ属/落葉広葉樹/
分布:北海道~九州】

山地から亜高山のエリアに生える落葉高木で、樹高は35mを超えるものもある。日本の南限は鹿児島県高隅山で、ブナとともに日本の落葉広葉樹林の主要樹種に数えられている。樹皮は灰褐色で、老木は縦に割れ目が入る。上の写真は、春に咲く雄花。秋にできるどんぐりは、リスやクマの大好物だが、食用として適さない。灰汁抜きをすることで食せるものの、非常に手間がかかる。縄文時代には保存食として重用されていた。加工性や着色性に優れる材は重厚感があり、高級家具材や建築材、さらにはウイスキー樽などに使われている。

有名・著名なミズナラ:サントリーウイスキーのミズナラ樽


ケヤキ

ケヤキ【欅/ニレ科ケヤキ属/落葉高木/
分布:本州~九州】

老木の樹皮は、モザイク状にはがれていく。若い木の樹皮は、灰色で滑らか。枝先につく葉は小さく、果実とともに秋になると枝ごと落ちて風に舞う。高さは20~25mにもなる大木で、40mを越えるものも。曲線的な先端が尖った曲線的な鋸歯を持つ葉が特徴。雌雄同株。4~5月に花をつけ、個体によって赤や黄色に染まる秋の紅葉が美しい。温暖な地域では丘陵地帯から山地に、寒冷地では平地にも自生する。材は木目が美しく摩耗に強いため、家具、楽器などに利用される。日本家屋や神社仏閣の建築用材としても重用されてきた。

有名・著名なケヤキ:馬場大門のケヤキ並木(天然記念物)、東京表参道のケヤキ並木


ヤマザクラ

ヤマザクラ【山桜/バラ科サクラ属/落葉高木/
分布:北海道~沖縄】

若い樹皮は横に長い皮目が目立ち、サクラ細工の茶筒を思わせる。老木は、黒褐色でひび割れる。日本の野生のサクラの代表的な樹種で、古くから和歌などに詠まれるなど、日本の人々に愛されてきた。サクラの仲間としては寿命が非常に長く、樹齢500年を超えるものもある。樹高も高く、個体によっては30mを超えるほどの大木になる。ソメイヨシノとの大きな違いは、葉芽と花が同時に開くことが多い点。ただし、果実は赤黒く、甘くない。開花時期は、3~4月。材は赤褐色で緻密、よい香りがあり建築材や家具材などに使われる。

有名・著名なヤマザクラ:吉野のサクラ(奈良県吉野郡吉野町)


トチノキ

トチノキ【栃の木/ムクロジ科トチノキ属/落葉広葉樹/
分布:東日本】

幹は褐色で縦に波形の模様が入り、老木では表面がはがれる。直径1m、樹高25m以上といった大木に成長する個体も多く、初夏に咲く花はよく目立つ。葉は、50cm以上にもなる非常に大きなもので、葉柄の先端に小葉を5~7枚つける掌状複葉。花の時期は、5~6月で、葉の間から穂状の白や薄い紅色の花を咲かせる。初秋に実る果実が、いわゆる「栃の実」。この種子は、食用として縄文時代から採集されている。材は芯が黄金色に近い色で、周辺が白い。木目が美しく、家具材として、またバイオリンの裏甲板などにも使われている。

有名・著名なトチノキ:栃木県の県木。とちのきファミリーランド、マロニエプラザ(ともに宇都宮市)


アオダモ

アオダモ【青梻/モクセイ科トネリコ属/落葉広葉樹/
分布:北海道~九州】

山地に生える落葉高木。雨上がりの際に樹皮が青緑色になることや、枝を水につけるとその水がしばらくすると青い蛍光色を放つこと、さらには青の染料として活用されたことなどからアオダモと呼ばれている。樹高はおおよそ10~15mほどまで成長するものが一般的だが、非常に時間がかかる。樹皮は、灰褐色でなめらか。老木は、縦に割れ目が入る。雌雄異株で、上の写真は雄株に咲く雄花。材は粘りがあり、家具材としてはもちろん、テニスラケットやスキー板、野球のバットなどの運動具としても優れた特性を持ち、愛用する選手も多い。

有名・著名なアオダモ:日本のプロ野球選手のバット


スギ

スギ【杉/ヒノキ科杉亜科スギ属/常緑針葉樹/
分布:本州~屋久島】

常緑の高木で、樹皮は赤味があり、縦に長く裂ける。葉は針形で先が尖り、長さは1cmほど。細長く直立した樹形が特徴で、樹高50mを超える個体も多い。ちなみに屋久島の縄文杉は、樹高23.5mで胸高周囲が16.4m。樹齢は、7200年ともいわれている。最も一般的なスギの代名詞は植林で、日本の植林面積は最大。木材としての活用が多く、古くから利用されてきた。また、防風林としてもスギは有効な樹種。一方、花粉症の原因としてもよく知られている。材は軽く木目が美しく、建築材や家具材、さらには桶や樽、箸などにも使われている。

有名・著名なスギ:縄文杉(鹿児島県熊毛郡屋久島町)、石徹白の大杉(岐阜県郡上市)


ヒノキ

ヒノキ【檜/ヒノキ科ヒノキ属/常緑針葉樹/
分布:本中中部~九州】

20~30mの樹高にまで成長する常緑の高木。スギに似た褐色の樹皮は、縦にスギよりも荒く裂ける。果実は径1cmほどの丸い毬果。長さ約3mmの葉は鱗片状で、ヒバやサワラなどと似ているが、葉裏の気孔帯がY字状になっているのが特徴。陰樹の代表的な樹木であり、幼樹は日陰を好む。日本では古くから最高品質の建材として重用されている。加工も容易で、材は美しく香りがある。上質な風呂素材として親しまれているほか、最古の木造建築である法隆寺や伊勢神宮などといった神社仏閣にもヒノキが利用されることが多い。

有名・著名なヒノキ:法隆寺(奈良県生駒郡斑鳩町)、伊勢神宮(三重県伊勢市)、明治神宮の鳥居(東京都渋谷区)、靖国神社の神門(東京都千代田区)


カラマツ

カラマツ【唐松/マツ科カラマツ属/落葉針葉樹/
分布:本州】

日当たりのよい乾燥した場所を好む落葉高木で、樹高は20m、大きいものでは40mにもなる個体もある。樹皮は褐色で、割れ目がある。毬果は、長さ3cmほど。日本の針葉樹としては珍しく、秋には葉が黄色く紅葉(黄葉)する日本唯一の落葉性の針葉樹。葉は白い粉をふんした薄い緑色で、形状は針型。特に特徴があるのは枝で、10~50cmほどまで成長する長枝と1~2mm程度の短枝という二形性を持つ。人工林を造林する樹種として重視されてきたもので、実際、天然林は多くない。材は強度があり、集成材や合板となり建築材、家具材などに使われる。

有名・著名なカラマツ:唐松岳(北アルプスの後立山連峰の一座で、長野県と富山県の県境に位置する。標高2,696m)


クロマツ・アカマツ

クロマツ・アカマツ【黒松・赤松/マツ科マツ属/落葉高木/
分布:北海道~九州】

クロマツ、アカマツともに日本全域に分布するが、北海道の個体は植林されたもの。「雄松」と呼ばれるクロマツの幹は、灰黒色。「雌松」と呼ばれるアカマツの幹は、赤褐色。枝先の芽は、クロマツは白い鱗片が目立ち、アカマツは赤い。葉は、クロマツは堅く、アカマツは針状で2本ずつ束生する。いずれもいわゆるパイオニアツリー(先駆植物)としてよく知られており、陽当たりがよければ栄養の乏しい土地でも成長する。また、アカマツはマツタケの生産林としても著名。材はともに耐水性があり粘り強く、建築材や家具材などに利用されている

有名・著名なクロマツ:群馬県、島根県の「自治体の木」
有名・著名なアカマツ:「まっくん」(長野県南箕輪村のゆるキャラ)


ローズウッド

ローズウッド【Rosewood/マメ科ツルサイカチ属】

世界的に知られる銘木のひとつ。マリンバやクラリネットなどといった楽器、さらにはチェスの駒などに利用されてきた。重硬な材質で、赤や紫色などといった縞状の美しい模様をつけることが多い。


ホワイトオーク

ホワイトオーク【White oak/ブナ科コナラ属】

北英大陸一帯に広く分布し、家具材や建築材、船舶や枕木などの材料、さらにはウイスキーやワインの樽材としてよく知られている。材は灰褐色や褐色などが多い。収縮率が高く、狂いや割れが出やすいのが難点。


ビーチ

ビーチ【Beach/ブナ科ブナ属】

北米大陸全域に分布するが、中西部やアパラチアン山脈エリアの比較的に標高の低い場所に多数生育する。日本の樹種でいうブナのこと。木材をビーチと呼ぶ。加工性や接着性に優れるが、反りや割れも起こしやすい。


チーク

チーク【Teak/シソ科チーク属】

東南アジアの熱帯エリアに分布する世界的な最高級材。材の色が生育状態によって変化する。伸縮率が小さく、材質が堅いうえ水にも強いので、船舶や家具、建築材、床材などとして広く活用されている。

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