森の経済を循環させる家具
「ホースロギングファニチャー」

荒廃した日本の森を再生するため、長野県黒姫で私財を投じて放置されていた森を買い取り、アファンの森として再生を実践してきた、C.W.ニコル氏。

その活動は林野庁も動かし、2012年にアファンの森に隣接する国有林の整備を、民間団体として初めて協定を結び委託されました。

まずは暗く荒れ放題の人工林に光を呼び込むため、残すべき木を選び、健全な成長が見込めない木の間伐を、森林管理の一人者である京都大学名誉教授の竹内典之先生の指導のもと実施しました。

放置されていた人工林には作業道もなく、伐り出した間伐材を運び出す手段として「ホースロギング(馬搬)」を行なうことになりました。

人工林はもともと木材を生産し森の経済を循環させる重要な役割があります。そのため伐り出した材を有効活用することが肝要と考えたニコル氏の協力要請により、ホースロギングで伐り出された木材をオカムラで家具にして世に出し、人工林の再生方法やホースロギングの振興を世の中にアピールするため、「ホースロギングファニチャー」プロジェクトが立ち上がりました。

放置された人工林のスギの間伐材を販売できる家具にすることは課題も多いのですが、ニコル氏の熱意により、人の汗と知恵と愛情をもってプロジェクトは推進されています。

家具にできなかった部分は、チップにして森の散策路に散布し土に戻す、また簡易製材を行なうなどして、森のベンチや設備に生まれ変わりました。


森のやさしい伝統技術
「ホースロギング(馬搬)」

馬は、歩きやすい道を知っています。森の中で、人から木材を託されると、馬は自分で歩く。目的地まで先に行き、待っていることさえあるそうです。人と馬が一体となって、森から木を運び出す「ホースロギング(馬搬)」。日本の森で昔から行なわれてきた、自然に寄り添う林業技術です。

馬が歩くと適度に耕され、山菜がよくとれる。そういわれることもあるように、「馬搬」は森にやさしい手段。車体の重い重機に比べると、地表へのダメージは極端に少ない。新たに作業道をつくる必要もなく、小回りがきき、立木を傷つけることもほとんどない。重機が入れない斜面や、入り組んだ森林でも活躍できる。斜度25度くらいまでなら、馬が引ける。

そして、森にやさしいだけではありません。日本で一般的に行なわれている小規模林業において、馬搬は手間やコストの面でも有利なことが多いのです。

ヨーロッパでは今でも活発に活用されている優れた林業技術なのです。

ほんの数十年前まで、日本各地の森林であたりまえの光景だった「馬搬」。その技を受け継ぐ人は、いまでは岩手県遠野市に残るだけどなり、名手ふたりも高齢化してしまいましたが、それを継ぐ次世代のチームが「馬搬」の普及や啓発に取り組んでいます。

古くて新しい自然によりそう林業技術を、日本でも復活し普及することを目指し、「ホースロギングファニチャー」プロジェクトは続きます。


「アファンの森」と「ホースロギングファニチャー」その魅力とコンセプトを伝えるインタビュー6選「アファンの森」と「ホースロギングファニチャー」その魅力とコンセプトを伝えるインタビュー6選

「アファンの森」編 森は生きている。森が教えてくれる。「アファンの森」編 森は生きている。森が教えてくれる。

  • 01C.W.ニコル 一般財団法人C.W.ニコル アファンの森財団理事長

  • 02石井敦司 一般財団法人C.W.ニコル アファンの森財団理事長

  • 03竹内典之 京都大学名誉教授

「ホースロギングファニチャー」編 森にやさしい伝統技術。「馬搬」の環を広げる。「ホースロギングファニチャー」編 森にやさしい伝統技術。「馬搬」の環を広げる。

  • 04岩間敬 遠野馬搬振興会事務局長

  • 05八丸健 一般財団法人美馬森Japan

  • 06芳賀沼伸 NPO法人みなみあいづ森林ネットワーク

「アファンの森」に戻ってきた
昆虫や植物たち

間伐された人工林がどう変化していくかを調査することも、アファンの森財団により実施されています。手を入れ始めた1年後には花も咲きだし、チョウをはじめとした昆虫たちも戻り始めました。

サワギク
サワギク
ヒヨドリバナ
ヒヨドリバナ
ヒヨドリバナ
ヒヨドリバナ
トリアシショウマ
トリアシショウマ
アキノキリンソウ
アキノキリンソウ
ツリフネソウ
ツリフネソウ
トリアシショウマ
トリアシショウマ
トリアシショウマ
トリアシショウマ
キツリフネ
キツリフネ

写真:麻布大学野生動物学研究室

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