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木工作品づくりを通じて「森を知る 木を知る 技を知る」ワークショップ「WoodLand WoodWork」。

 「森を知る 木を知る 技を知る」をテーマに、昨年秋、2日間にわたり、長野県の黒姫山「アファンの森」でワークショップキャンプ「WoodLand WoodWork」を開催しました。

 自然と森に関する知見や技術を深めつつ、オリジナルの木工作品をつくりだす。木材という自然の恵みを活用し、生物多様性や健全な森の在り方、木材の知識や職人技、木育といったテーマ、ひいては自然や森を、楽しみながら多角的に体感・体験・体得する。そんな思いが、本ワークショップ「WoodLand WoodWork」には込められています。

長野県黒姫の「アファンの森」が今回の開催地。C.W.ニコルさんが1986年より健全な人工林としての再生活動を始めた森で、現在では多彩な生物が森を賑わしている。

森を知る

 今回の「WoodLand WoodWork」には、およそ20人が開催地である長野県黒姫「アファンの森」に集まりました。

 まずは、森の専門家と「アファンの森」をのんびりと散策しながら、さまざまな森の知識を体得していきます。北信五岳のひとつ、黒姫山の麓に広がる「アファンの森」は紅葉が始まりつつあり、とても心地のよい季節を迎えていました。

 そんな森のエネルギーを全身に浴びながら、「アファンの森」の現状や歴史を通じて、食べられる木の実、毒キノコ、生息する生物などなど、生物多様性や健全な森の在り方といった森に関するさまざまな知識を学んでいきます。

 20数年前は荒れ果てた里山だったという「アファンの森」は、C.W.ニコルさんが故郷である英国・南ウェールズの“アファン”を模すことを意図して名づけた森。再生活動を始めた当初(1986年)の写真や資料を見ながら、かつての森の姿と現在の違い、健全な森の仕組みなどを学びます。お話をしてくれたのは、「アファンの森」財団の石井敦司さん。「この実は食べられるかな?」といいながらすぐさま口に入れてしまう(ただし、食べないで必ず吐き出す。毒性のある植物もあるので、要注意)など、楽しいパフォーマンスを混ぜながらのレクチャーに参加者全員が聞き入り、「森を知る」ことができました。

森に関する多彩なお話をしてくれた「アファンの森」スタッフの石井敦司さん。写真やデータの紹介、樹木の葉っぱや木の実を実際に手に取っての説明などがあり、多種多様な樹木と触れ合いながら、森の知識を深めていく。

木を知る

 森に関するさまざまなレクチャーを受けた後、次は「木を知る」。この過程では、実際に木を伐り出していきます。植林されたスギ林のエリアへと移動し、間伐が必要ななスギを見極めて伐採します。木材の生産拠点である人工林の知識を得ることで、材木の原材料となる木について、さらには健全な人工林の健全な経済サイクルついての見識を深めます。

 いまや希少な伝統技術となった「馬搬(ホースロギング)」による搬送デモを見学します。「馬搬(ホースロギング)」は、森へダメージを与えることが少ない自然と共生する林業技術。自身の目で見ることによって、「馬搬」の意義やメリットを実際に感じることができます。ここで午前中のプログラムが終了。これまた楽しいランチタイムとなりました。

間伐が必要な樹木を見極め、伐り出す。倒れる方向を見定め、最初に切り込みを入れる。その後、伐採。見事なスギの木目。中心部(心材)は「赤味」と呼ばれ、色が濃く耐朽性が高いのが特徴。外側(辺材)は白っぽい淡色で、中心部よりも柔らかい。

樹木を馬に牽引してもらうためのセッティング作業。こんなシーンも非常に貴重なもの。ちなみに「馬搬」で活躍する馬たちは、休憩中、地面に落ちているどんぐりや葉っぱをせっせと食していた。馬もどんぐりを食べるのですね!

 

ランチでひと息。今回のメニューは「アファンの森」で採集されたナメコなどをふんだんに使ったキノコ汁と、腹持ちのいい長野の名物おやき。

技を知る

 おやきとキノコ汁でお腹を満たし、いよいよ「技を知る」プログラム。この過程では、森の経済を支える林業や木材に関係する専門家を交え、木工工作、ひいては家具づくりにつながる技の知見を深めていきます。以前に伐り出した木を森の近くで、自分たちで製材・加工し、木工作品をつくり出します。

 始めに使用する工具の使い方の注意点などのガイダンスをした後、作業タイムへ。ふたりで押し引きする大きなノコギリや、さまざまな電動工具、手動工具を使って、作品の完成をめざします。こうした作業を通じて、電動工具や手動工具を使い比べ、職人技の一端を感じとります。普段、ほとんど使うことのない工具の数々を実際に自分で扱うことは、新鮮かつ貴重な体験かもしれません。電動工具を扱う際は、必ず講師がアドバイスをしながら作業を見守ります。

 また、製材業を営む中村木材の中西社長から、現業としての話をレクチャーしていただきました。さらには、地元黒姫で指導する家具作家の蛭川様からも作品づくりのアドバイスをいただきました。

「ACORN」のエプロンを装着して木工工作を開始! 緑色の「ACORN」エプロンをつけているのは講師陣。各工具の使い方や作品づくりのヒントを適宜アドバイスする。茶色のどんぐりは参加者のみなさん。それぞれのアイディアのもと、オリジナル作品の完成をめざす。
電動工具ではなく昔ながらの玉切りに使う大きなノコギリを使って木材をカットする。ふたりで息を合わせた共同作業。

切る、削る、磨く、穴をあけるなどなど、目的に応じた電動工具や手動工具を駆使して作品をつくり上げる過程で、さまざまな職人技を体感・体得する。ちなみに電力の一部は、設置したソーラーパネル(下写真)によって供給している。

 非常にこった繊細な作品作りに没頭する人、シンプルながらも巨大で力強い作品を作る人……、各人楽しみながら作業に没頭しました。途中で納得がいかず、焚き火のなかにそっとくべているなんて人もいました……。そんななか、最終的には全員が個性あふれる素敵な作品を作り上げました。参加者全員が世界にひとつしかないオリジナル木工作品作りを楽しみ、職人技を体得されたのではないでしょうか。

早稲田大学理工学術院 古谷誠章教授の研究室で木育家具の製作を学んでいる大学院生のふたり。さて、今回の作品は……? なんと、一部が「エコプロ2017」に出展されました!(本サイト「エコプロ2017」レポート記事、参照)。
最後の仕上げにオイルを塗ると、あら不思議、光沢が出てとても美しい!

 生物多様性をはじめとした健全な森の在り方、木材や人工林に関する知識、さらには馬搬や家具づくりの職人技といった文化や技術をも楽しみながら、森を知り 木を知り、 技を知るワークショップ「WoodLand WoodWork」。

 森からつくり出す家具ではなく、森のために生まれる家具でありたい。―――未来を思う家具づくり。「WoodLand WoodWork」を通じて、そんなオカムラの思いの一端をぜひみなさんも体感してみてください。なお、本ワークショップ開催に関する情報は、本サイトにて随時告知します。

今回のワークショップに参加したみなさんの作品の数々。よーく見ると、これ削っただけ??? なんていうのもなかにはあるが、繊細かつ美しい作品が多数! ぜひみなさんも「Wood Land Wood Work」に参加して、世界にひとつしかないオリジナル木工作品の製作にチャレンジしてください。

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