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太陽光というエネルギーの恵み——その1 「いちばん陽の短い冬至に太陽光の恵みについて考える」

雲間から地上に光が差し込む光景は荘厳。昔の人はそれに神をイメージしたのだろう。

改めて知っておきたい太陽のエネルギー——ヒトや植物、地球への恩恵

 季節が移り変わり、夕暮れの時間が早くなってきた今日この頃。一年でいちばん陽の短い冬至(今年は12月22日)ともなれば何となく太陽の光が恋しくなり、ふだん気にもしない太陽の恵みに思いが至るというものですね。日照時間の推移による気温の変化ばかりでなく、気候や気象、大気の流れ、海流の動きなど、地球上の自然の営みは太陽が源。さらに動植物の生育、そして太古の地球上に生命が誕生したのも太陽エネルギーが根源です。太陽の力で私たちは生かされている。そんな太陽と地球に暮らすヒトや生き物との関係について、改めて理解を深めてみませんか? 今回は、気の遠くなるほど膨大なエネルギーを放出し続けている太陽そのものについて探索してみます。

太陽光はすべての生命活動の根源

 日照時間の推移による気温の変化ばかりでなく、気候や気象、大気の流れ、海流の動きなど、地球上の自然の営みは太陽が源。さらに動植物の生育、そして太古の地球上に生命が誕生したのも太陽エネルギーが根源です。今、私たちが直接感じる太陽の恵みについて、改めて振り返ってみましょう。その第一は、なんといっても昼間の明るさ。昔の人々は陽が昇ると活動を始め、陽が沈むとともに一日を終えるという生活を長い間続けてきました。そのサイクルは基本的に今の時代も変わりませんが、照明の灯りなどがなかったその昔、陽が沈んだ後は漆黒の闇。月灯りや星灯りがあったとしても、けっこう真っ暗な怖い世界が広がっていたのではないでしょうか。

 日光の暖かさも肌で直接感じることのできる太陽の恵みのひとつ。太陽の光と熱が地球上の気象を動かし、樹木の光合成を生み、さまざまな生命を育んできました。

『旧約聖書』には、こんな一節があります。「神はいわれた。光あれ!」。なにもない闇のなかからこうして世界が始まったと、『旧約聖書』の『創世記』に記されています。この一説は神話ではありますが、現実に太陽の光(エネルギー)によって地球に生命が誕生し、私たちの世界が始まりました。また、太陽光によって地上のありとあらゆる生命活動が支えられているのも間違いありません。

 だからこそ、昔の人はこうした太陽のありがたみに感謝と畏怖の念を抱き、太陽信仰なども世界各地で生まれていったのでしょう。

太陽と植物の連携で酸素が作られる

 もうひとつ、直接的に肌で感じることではありませんが、太陽が地球上に及ぼす重要な作用として、植物の「光合成」は外せない要素です。植物(主にその葉っぱ)は太陽の光を浴びると化学変化によって炭水化物を作り出し、酸素を空気中に放出。簡単に言ってしまえばこれが光合成です。つまり植物と太陽の連携によって、酸素を必要とするすべてのヒトや動物は生かされているというわけですね。

 太陽が地球上に及ぼす作用を突き詰めていくと、まだまだ奥深いものがありますが、その前に太陽そのものに注目してみましょう。そもそも太陽はなんで光っているの? そのエネルギーの正体とは?

 太陽の誕生から現在の活動に至るまで、今日ではさまざまな研究が進み、多くの事柄が解明されています。昼間の太陽はあまりにまぶしく、私たちはなかなか直に見ることができませんが、太陽のプロフィールを天文学の世界からちょっとのぞいてみましょう。

なにもないと思われている宇宙空間にも、じつは極々薄いガスが漂っている。その集合したものが星になる。

太陽は空に浮かぶ自然界の超巨大原子炉

 宇宙空間には、主に水素などの星間ガスと呼ばれる物質が漂っています。太陽が生まれる前、宇宙のある場所でひとつの星の寿命が尽き、超新星爆発を起こしました。その爆発の波動によって星間ガス密度の濃い部分(といっても人間的感覚ではとても薄い)ができ、自らの密度の重力で周囲のガスを引き寄せていきます。それはやがて巨大なガス雲となり、さらに成長して凝縮されていった結果、今から約46億年前に太陽が誕生したのではないかと考えられています。

 太陽のような恒星の寿命は100億年くらいとされているので、46億歳の太陽は、人間にたとえるなら、まさに働き盛りの壮年といったところでしょうか。

 太陽が輝いている理由は、内部の核融合反応にあります。太陽は、地球のように地面があって燃えているわけではありません。ガスの塊であり、その成分は水素92%、ヘリウム7%、残りの1%未満のなかに炭素や酸素、鉄などの物質があります。そして太陽の内部では、毎秒6億5,000万tの水素原子が激しくぶつかり合ってヘリウムに変化する核融合反応が行なわれ、中心部の温度は1,600万℃、気圧は2,500億気圧という超高圧を生み出しています。要するに、太陽は自然界の超巨大原子炉というわけなんですね。

 太陽から放出されるエネルギーは、1秒間に水素爆弾数万個分の38億6,000万×1兆メガワットといわれ、そんな数字を示されてもなにがなんだかわけがわかりません。しかも、中心部でつくられるエネルギーはすぐに宇宙空間に放出されるのではなく、太陽内部で対流しながら数十万年(近年の研究では17万年とも)かけてじわじわ表層に届き、やっと光となって輝くのだそうです。

 ということは、今私たちが見ている太陽の光は、はるか太古の昔に核融合でできたエネルギーということになります。

 太陽の表面は「光球」と呼ばれます。ただし、太陽はガスの塊なので表面に明確な境界面はなく、光球の深さ(厚み)は300kmくらい。表面温度は約6,000℃で、黒点や白斑などの現象はこの光球で見られます。

 光球の外側は、上空1,500kmくらいまでを「彩層」と呼び、さらにその外側の外層大気を「コロナ」といいます。光球から外に向かうにしたがって温度はどんどん高くなり、コロナでは約200万℃にも達します! 中心部より外側のほうがより熱くなるというのはちょっと不思議ですね。その理由はまだよくわかっていないそうです。

太陽外殻のオレンジ色の輪の部分がコロナ。温度は200万℃にも達し、フレアと呼ばれる炎が噴き上がることも。

太陽と地球の奇跡の関係

 このようにとてつもない熱球の太陽ですが、太陽系のなかで地球との関係を見ていくと、地球は太陽との距離が絶妙。それが地球上に生命が発生し、生き延びていける奇跡の理由のひとつといわれています。

 地球が生まれたのは太陽ができてから数千万年後。太陽が生まれた後、周囲に残ったガスや塵が凝縮しながら太陽を回り始めます。そうしてできていった岩石(金属成分)の塊が衝突し合い、長い年月をかけて惑星としての水星、金星、地球、火星が形成されていったのではないかと考えられています。

 宇宙のなかで生命が生まれ、生息できる領域のことを「ハビタブルゾーン」と呼んでいます。太陽のサイズと地球のサイズ、そして距離の関係は、まさにそのハビタブルゾーン真っ只中というわけですね。太陽の大きさや地球との距離に関するデータを少しばかり紹介しましょう。

【太陽のデータ】
■質量:1.98892×1030 kg(地球の約33.3万倍)
■直径:約139万1,000 km(地球の約109倍)
■地球との距離:1億4,959万7,870km(299,792km/secの光の速さで約8分20秒かかる)

『地球がもし100cmの球だったら』(永井智哉著/世界文化社刊)という、太陽と地球の関係などを知るのにとてもわかりやすい本があります。それによれば、100cmの地球から見て太陽は12km先の東京ドームほどの大きさ。また、光のエネルギーは東京ドームに100w電球を140億個つけたくらいの明るさに相当するのだそうです。ちなみに、月は直径30cmのビーチボールほどの大きさで、100cmの地球から30mくらい離れたところをクルクル回っていることになります。

 太陽エネルギーは宇宙空間の四方八方に飛散し、約1億5,000万km離れた地球に届くのは、太陽が発する全エネルギーのわずか22億分の1。それでも1秒間に42兆kcalというエネルギーが地球表面に到達しています。42兆kcal/secという数値の意味するところはなかなか理解しにくいですが、例えば1秒間に全世界の人類が石油や石炭、電気などで消費しているエネルギー量と比べると、その2万倍以上になるといいます。

 このエネルギーが地面や海水を温め、水蒸気をつくり、雲となって雨を降らします。また空気を動かして風を起こし、水を循環させ、大気層は一定範囲内の気温を保ち続け、植物の光合成を促進させて地球上の生命活動を支えています。

 太陽に近い水星や金星になると、地球のようなワケにはいきません。受ける太陽エネルギーが大きすぎ、高温で水が観測されず、生物は生まれません。また木星以上に太陽から遠ざかってしまうと、今度は到達エネルギーが小さすぎて、地表はマイナス100℃以下の低温。水があっても凍ってしまい、やはり生物が生存していくには困難な環境となります。

 22億分の1にまで減った太陽のエネルギー量と地球のサイズが、命が育まれていく絶妙な分量だったということになるのでしょうか。

 ただ、火星あたりの距離とサイズはなかなか微妙かもしれません。生き物がいる可能性がないわけではなく、ということは火星もハビタブルゾーン内なのでしょうか? 今後の火星探索にも注目したいところですね。

 今回は主に太陽のプロフィールを紹介しました。今後、地球と生命の誕生における太陽エネルギーの影響ついて、もう少し詳しく触れていく予定です。

地球は生命が生まれ、育まれる条件を備えた奇跡の星。地球と似た環境の星は、この宇宙にいったいいくつあるのだろうか……。

[文 ACORN編集部]

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