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ひび割れた木テーブルの新たな価値

 2016年にホースロギングファニチャーテーブルとして、C.W.ニコル氏のホースロッジへ納入したコナラのテーブル。2015年10月末に南会津で行われた馬搬フェスにて、デモンストレーションとしてひき出されたコナラ材をニコル氏のリクエストでテーブルにしたものです。  木を木材として家具などで使用するには、収縮や変形を割れを防ぐために十分に乾燥させることが重要です。特に家具として活用する場合は含水率を8%以下に抑える必要があります。乾燥には自然乾燥と人工乾燥があります。自然乾燥は最低一年以上の長い期間が必要になりますので、近年では人工乾燥が主流となっています。また日本の自然環境では気乾含水率15%となるため、自然乾燥ではそれ以下には下がりにくいので、特に家具用木材は人工乾燥が必要となります。もともとコナラは乾燥が難しく暴れやすいので、家具用としては活用されない樹種で、そのうえ一般的に1年以上かけるといわれる広葉樹の乾燥期間を、ホースロッジの竣工に合わせ短期間になった結果、徐々に木材が暴れてはじめて、2年経過し矧ぎ(ハギ)の部分からひび割れました。  しかし古くからの木造建築や木製品がそうであったように、木製品は治して長く使えるを実証するために、契り(ちぎり)加工をしました。契り(ちぎり)加工とは、蝶々のような形状をしたコマをひび割れているところに差し込み広がりを防ぐもので、接合部にも活用される技術です “ちぎりを結ぶ”という言葉の語源はこの契り(ちぎり)加工からきているようです。  今回の契り(ちぎり)はケヤキ材で製作されました。ひび割れの端からほど良き間隔に契りを入れる位置を決めます。  墨出しをしたのち、契り(ちぎり)の型枠材を天板としっかり固定します。  まずは、型枠にそってトリマーで天板を彫り込みます(左上)。彫り込みが終わるとノミでバリをとり、契り(ちぎり)を入れる穴の精度を上げます(右上)。接着剤に着色し契り(ちぎり)と穴に塗り込みます(左下)。  契り(ちぎり)をはめ込み、出っ張りをカンナで削ります(右上)。サンダーで天板と面合わせし、ペパーヤスリで仕上げ処理します(左下)。手が触れる場所を彫刻刀で面取りします(右下)。  表面が仕上がったら、オイルステインを塗り込みます。2年の経過で色焼けしていて、同じ品番塗料でも色が合わないので混ぜ色をしました。全体にやすりをかけて新たに塗り直すこともできますが、今回は部分補修としました(左上)。一連の作業を裏面も実施します。裏面ではソリ留めの鉄板に天板が予想外に暴れて食い込んでいたので、削り出して逃げを作り出しました(右上)。古来から伝わる割れた陶磁器をつなぐ技術“金継(きんつぎ)”が、新たな価値を創出するように、木の修復も新たな味わいを創出します(下)。  木の製品は手を入れれば永くつかえて、手を入れた分だけ愛着がわきますね。

[文 ACORN編集部]

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