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アファンの森に学び、活かすべきこと。【アファンの森財団 石井敦司】

一般財団法人 C.W.ニコル・アファンの森財団 石井 敦司氏

 

 アファンの森とスギの人工林では、それぞれスタートから目標が違います。

 スギ人工林の場合は、人が将来、木材として利用するための木材生産林なので、どのような大きさ、質の材をどれだけ収穫したいかという生産目標に向けて、それに合わせた手入れを行っていきます。しかし現在、その多くは手入れが進んでいないため、木材生産林としての機能を失いっつあります。

「この森林をどうにかしなくてはならない」と、間伐の必要性も近年いわれていますが、間伐本来の意味がすり替わっているようにも感じます。残した木を良質な木へと成長させるために行うのが間伐です。けれども現在の間伐は、木材価格の低迷による林業の衰退もあり、効率を優先して選ばずに伐る列状間伐のような方法も多く行われています 。

 間伐は、ただ木を伐り倒すだけではなく、生産目標に向けて適正な密度管理を行い、いっ、どの木をどの程度伐採するかを見極める、代々技術者から技術者へ受け継がれてきた林業技術です。木を見極めずに高性能林業機械で行われる列状間伐や、林業の衰退は、このままだと林業技術の衰退へとつながつてしまいます。

 アファンの森は、1986年より手入れ がはじまりました。手入れ当初は笹や藪にツルが繁茂して人が立ち入ることもできない状況でした 。

 その現状を目の当たりにした私たちは、ツル切り、藪刈り、笹刈り、整理伐などを繰 り返し、手入れを行いました。地面まで光が届いたことで、自然に生えてくる稚樹を利用する天然下種更新を基本とし、十分な稚樹の確保が困難な場合は、必要に応じて郷土樹種を主体とし た植栽を行ってきました。

 明るくなった森には、稚樹以外にもさまざまな 植物が生えてきています。希少なものからこれまで森に無かったものまで。下草刈りの 際には、これらを見極め残すことも心掛けてきました。

 森が本来持つ力、多様な恵みを最大限に引き出し、さまざまな生きものたちが暮らせる森づくりを行うためには、自然環境に順応した森本来の自然遷移を見極め、いかに合理的に森に手をかけるかの管理技術 が必要です。

 200 年 300 年の巨木が上層を覆い、ごく若い樹木から寿命によって枯れる樹木まで、次世代を担うさまざまな年齢の樹木がモザイク状に混ざり合う、私たちはそんな森づくりを目指しています。

2014年12月発行 HORSE LOGGING FURNITURE「trot table」カタログより

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