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植物のチカラ“和のアロマ”で虫よけスプレーづくり

 キャンプ、森や原っぱでの遊び、自然環境保全に関わる活動、アウトドアスポーツなど野外活動においてどうしても気になるのが虫刺されです。今回は蜂の仲間や毛虫による刺されは対象外としました。

 実は虫刺されは夏だけのものではなく、春から秋まで、真冬を除いてかなり長い期間気にしないといけません。さらに、皆さんご存知の蚊の仲間をはじめ、ブユ、ウシアブ、ヌカカ、そしてマダニやヤマビルなど、様々な条件下で様々な吸血動物に対する対策が必要です。血を吸われて痒くなったり、少し痛みを感じたり、しばらく血が止まらなくなったりするだけではなく、場合によっては非常に危険な感染症を媒介することもありますので、軽く見ていると痛い目に遭うこともあるのが虫刺されです。

(左)ヒトスジシマカ (中央)マダニの仲間 (右)アカウシアブ

 そこで“和のアロマ”と“虫除けスプレーづくり”をご紹介します。

 アロマとは、主に植物が生育する環境に適応するために生成している物質をその芳香とともに生活に活かすもので、過度な湿気や乾燥を防ぐためだったり、虫や菌などから身を守るために生成しているものです。香りを楽しみながら植物たちの偉大な力を利用させてもらうアロマですから、人間が自然の恵みや力に想いを馳せて、興味を持ってもらうにはもってこいなのです。

蒸留器(アランビック)

 【材料と道具】

 まずは用意する材料と道具です。精油の分量は肌に直接使用する場合には1~2%以下、お子さんやお肌が弱い方であれば0.5%~1%程度に希釈することを前提に決めるのが基本となります。今回は50mlのスプレーボトルに2%濃度で作る分量をご紹介します。

  • 虫除け成分が含まれる精油→50mlのスプレーボトルに対して20滴以内(約1ml以内)(より好みの香りにするために虫除け成分が入っていない精油を少量ご準備いただいても結構です)
  • なるべく細かい目盛りのついたビーカー
  • 無水エタノールもしくは消毒用エタノール(手に入りにくい場合はホワイトリカーで代用可能です)→5ml
  • 精製水(蒸留水)→45ml
  • スプレーボトル(50ml用)
  • 攪拌棒(割り箸やマドラーなどで代用可能です)
  • 虫除け成分が含まれる精油(エッセンシャルオイル)としてはシトロネラやレモンユーカリ、レモングラス、ゼラニウム、ペパーミントなどが有名ですが、今回は日本の自然を感じ、日本の自然に少しでも目を向けていただきたい…ということで“和のアロマ”からアスナロ(青森ヒバ、ヒノキ科)和ハッカ(ニホンハッカ、シソ科)を選び、心を落ち着かせてくれる香りとしてクロモジ(クスノキ科)と屋久島の杉(屋久杉と分けるために地杉と呼ばれる植林された杉、ヒノキ科)を選びました。

 アスナロ(青森ヒバ)はヒノキ科アスナロ属の針葉樹で、「ヒノキに明日なろう」という意味から命名されたとされ、明日檜(あすひ)とも呼ばれます。しかし、アテ(貴)と呼ばれる地域もあり、古来より人の生活にとって重要だったことが窺えます。青森ではヒバと呼ばれ、今回は青森ヒバという名称で市販されている精油を使用しています。

 シトロネロールやリナロールが防虫成分とされ、ヒノキチオールは殺菌や抗菌の効果が期待できます。ハッカの仲間はペパーミントやスペアミントなど様々な種類がありますが、今回は日本の自然の魅力に迫るということで、ニホンハッカ(和種ハッカ)を使用しました。

 在来種のハッカですが、採取できる油量が少ないために品種改良され、現在では園芸品種の和種ハッカを使用して精油が市販されています。メントールやメントン、リモネン、αピネン、βピネンなど多くの成分が含まれますが、特にハッカの主要な成分であるメントールは防虫効果だけでなく清涼感を感じさせる効果も期待できますので、虫除けスプレーが最も活躍する暑い季節にもってこいです。

(左)アスナロ (右)ハッカ

【アロマ虫除けスプレーの作り方】

  1. ①ビーカーにアルコールを5ml計量して入れます。
  2. ②ビーカーのアルコールに精油をお好みで20滴入れて混ぜます。今回はヒバを10滴、ハッカを8滴、クロモジとスギを1滴ずつ、計20滴入れました。ビーカーの中で攪拌棒を使って混ぜてもいいですし、スプレーボトルに入れてから振って混ぜてもいいです。白っぽく濁っていたらOKです。この作業を乳化と呼び、水に溶けにくい精油を溶けやすくします。
  3. ③ビーカーに精製水を45ml計量してスプレーボトルに注ぎます。

 これで完成です。乳化をしたとはいえ、やはり精油は水と分離しやすいため、使用する前にスプレーボトルを良く振ることをお勧めします。今回はお肌に使用することを前提で精油の分量が多めの2%希釈、50mlに対して1mlの精油にしましたが、衣服や身につけるものに塗布して使用する場合はもう少し多めにすることも可能です。今回ご紹介したのはあくまでも一般的な精油の選定、分量となります。パッチテストなどで自分に合った精油、分量を事前に確認するようにしてください。

 今回は虫除けスプレーづくりでアロマに、そして植物の種類としてはアスナロ(ヒバ)やハッカ、クロモジ、スギについて触れましたが、他にも様々な植物の力を借りた様々な活用方法があります。

 和のアロマづくりで植物の力を生活に取り入れ、日本の自然の魅力を感じていきたいと思います。

文/三森典彰 写真/三森典彰・佐々木知幸・ACORN編集部  編集/ACORN編集部

ライター紹介:三森典彰/BiotopGuild

“ビオトープ”という概念を用いながら、主に都市部の自然環境にまつわる仕事に従事。自然に興味がない人にも日常の中で楽しみながら自然や生きものに目を向けてもらえる仕掛けづくりをモットーとしている。自然に対する知識や理解の普及、業種や立場を超えた 交流・接点をつくる場づくりなどおこなうBiotopGuildを設立し代表をつとめる。

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