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森の魅力づくりで地域活性

 フジロックの森で今年から企画協力をしている森の魅力づくりコンテンツの第一弾バードウオッチング。初夏に制作したバードマップは8月に開催されたフジロックフェスティバル21の会場でパネル展示もしていただきました。

 そして10月2日に行われた第67回ボードウォークキャンプでは更にバージョンアップしたコンテンツ展開に協力させて頂きました。

 今回は越後湯沢でコワーキング、シェアオフィスを展開するキラ星BASEさまにも協力を頂き、イベント前日にキラ星BASEさまの工作室にて巣箱づくりワークショップも実施しました。事前予約では3組4名が参加予定でしたが、当日関東圏を通過中した台風の影響もありすべてキャンセルとなりました。準備中にコワーキングスペースで働いていた地元の方が飛び込み参加希望され、本番ではお子様も連れてこられて参加いただきました。

 まずはスタッフでサンプル用に巣箱づくり実施。今回は簡単な巣箱なので木工エキスパートは不在で、加工する工具を試行錯誤しながらなんとか完成しました。因みにスタッフはフジロックの森から苗場観光協会の佐藤会長、事務局の米田さん。急遽お手伝いに入ってくれた鳥専門家の川崎きみおさん、オカムラからACORN事務局の参加です。 初めての公房なので工作機器の使い方なども手探りでしたが、何とか試作品完成。綺麗に加工された板材を用意して頂いたのですが、川崎にさんによれば伐りだしたままの、ざらついた表面の方が鳥的にはツメがかかりやすく良いそうです。

 午後からの本番では前出の飛び込み参加の親子と和気あいあいの中、巣箱づくりワークショップをはじめました。慣れない釘打ち作業や、焼き印押印など親子で楽しんでいただきました。板材をある程度加工していたので比較的スムースに制作は進みました。木工工作の腕に自信がある方には無垢の板材加工から始めた方が楽しんでいただけるかもしれません。 参加者の方に感想を聞いたところ、自然豊かな湯沢町ですが、こういったワークショップに参加できる機会が多くはないので、非常に楽しく勉強になり子供にも良い体験をさせられました。今後もこのようなイベント開催を期待しますとのことでした。残念ながら翌日のイベントには参加できないそうで、別途設置場所をご案内させていただきました。

 さて翌日ボードウォークキャンプイベント本番日、台風一過の晴天で気持ち良い朝です。今回はフジロックではのホワイトステージエリアで開催されました。 前日からキャンプした方、早朝より来られたかでイベント開始時にはかなりの方が集まりました。主催者よりボードウォークのメンテナンス説明の後、スペシャル企画のご案内を飛び込み参加大歓迎ということでお知らせしました。午前中はボードウォークメンテナンス、午後に鳥と昆虫ウオッチングが大まかなスケジュールです。

 参加者の皆さんがボードウォークメンテナンスを進める中、巣箱のフィニッシュ作業と、事前にある程度の巣箱をかけておくことにしました。

 鳥の専門家川崎先生はツリークライミングもできるので、高所での作業もお手の物です。ボードウォークメンテナンスで掃除を手伝っていた子供たちが、巣箱架け作業についてきました。

 午前中ボードウオークメンテナンス作業は交換済み板の廃材撤去でした。

 地元の食材を使ったお昼を振舞われたあと、鳥・昆虫ウオッチングが開始です。インタープリターは企画当初からお手伝いいただいている鳥の専門家 川崎きみお先生と、今回初参加となる昆虫の専門家 慶野友和先生。

 渡り鳥は旅立ち、子育ても終わっている鳥たちの活動は、春~夏よりは活発ではなく、飛んでいる鳥も少ない状況でしたが、鳴き声は聞こえてくるので、参加者も目を凝らして探します。 昆虫好きの子供たちは、慶野先生に寄り添い、網の使い方などを熱心に聞いていました。

 鳥が余り見られないので場所を、フジロックでのアバロンフィールドエリアに隣接する森の中に移動し主に昆虫探し。森の中に入り参加者も更にヒートアップして探します。

クマの痕跡に見入る参加者の皆さん
切り株に巣くった虫を食べようとクマが掘り返した後。爪痕が残っていました。
木に絡まる”ツタ漆”に触ってかぶれない様に注意喚起
慶野先生が専門的な道具を使いアリをあつめて子供たちの興味をそそります。
逃げるシマヘビを追いかけたら、威嚇されました。

 アバロンフィールドエリアからフィールドオブヘブンエリアを抜けて、針葉樹林が多いエリアのボードウォークで自然観察しウオッチングツアー終了。

 ツアー終了後は希望者に巣箱架けの体験ワークショップを実施。大人から子供まで参加いただきました。3つの巣箱を架けて終了。午前中に架けたものと合わせて7つの巣箱がフジロックの森に設置されました。小鳥が気に入って住んでくれ、来春には新たな命が育まれますように。

 日暮れ時にライトトラップを仕込んで昆虫観察を開始します。 天気予報は晴れでしたが開始直後雨が降り出ししばし様子見となりました。陽がどっぷりと暮れて、あたりが真っ暗になった頃には雨も小雨になりワークショップ開始。少しずつ蛾が集まりはじめました。この季節はカブトムシなど甲虫は期待できず、蛾が主体になるそうで、怪獣モスラのモデルとなったヤママユガの出現に期待を馳せます。近くにハチの巣があるらしくハチも寄ってきました。暗くなり気温も下がり巣に戻れなくなったハチはずっと滞在していました。

 調査対象が蛾なので、参加者数が未知数でしたが、思いのほか子供たちから好評で質問の嵐でした。昆虫専門の慶野先生によれば、今回確認できた蛾は50種類ほど。針葉樹林と広葉樹林が混ざるこのエリアでは植物の種類も豊富なので、幼虫の餌も豊富で100種類はいるのではとの事です。

ライトトラップにやってきた、このシーズンの大型の蛾の代表3種(左/ヒメヤママユ 右/クロウスタビガ 下/クスサン)

 森の魅力を知ってもらうこの企画も少しずつ盛り上がってきました。次回はさらにブラッシュアップした企画をお届けできればと考えています。

 フジロック開催期間以外でも色々楽しめるフジロックの森。これからの季節は紅葉が綺麗だそうです。

【マニアックなおまけ】 蛾の中でも世界的にも人気のグループ,Catocala(シタバ)属の各種蛾の当日に見栄え良く撮影出来た写真を、昆虫博士の慶野友和先生から頂きましたので掲載します。刺激すると写真のようにカラフルな後翅を見せてくれるそうです。写真はありませんが、日本にいるCatocala(シタバ)属32種中,エゾシロシタバ、キシタバ、ゴマシオキシタバ、ヨシノキシタバ、オニベニシタバもなども飛来したそうで、この日だけで10種が確認できたそうです。

エゾベニシタバ Catocala nupta nozawae
食草(幼虫の餌):ドロノキ,ポプラ
オレンジ寄りの赤い後翅が魅力.
オオシロシタバ Catocala lara lara
食草:シナノキ
名前にオオと付いているけれど,シロシタバより大きなことはほぼあり得ない種類.
シロシタバ Catocala nivea nivea
食草:ウワミズザクラ
普通種ですが,見栄えのする大型種.
ベニシタバ Catocala electa zalmunna
食草:イヌコリヤナギ,ポプラ
ビビッドなピンクの後翅が綺麗.後翅が赤い種類はヤナギ類食.
ムラサキシタバ Catocala fraxini jezoensis
食草:ヤマナラシ,ポプラ,ハコヤナギ属
シロシタバと並んで,日本最大級シタバ.本種はシタバ属で最後に出現する種類.

 

文/ACORN編集部 写真/いぬづかえつじ、川﨑きみお、慶野友和

 

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