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【“木”になるマメ知識】木って何歳まで生き続けるの? 木の寿命を探ってみよう
シメ縄の大木は神社によくある光景ですが、そうした太い幹を持つ“御神木”は、多くが樹齢数百年という古木であったりします。人間から見れば、木はとてつもなく長寿の存在! では、木ってどれほど生き続けるのでしょうか? 世界一長生きの木はいまいったい何歳? 逆に短命の木ってどれほど生きるの? 木の寿命に関する疑問について探ってみましょう。
ピラミッドがつくられた時代より
ずっと前から生き続けている高齢の木
現在確認されている単独の木として、世界で一番長生きしているのは、米国カリフォルニア州インヨー国立森林公園内のブリッスルコーンパイン(日本名はマツ科のイガゴヨウ)といわれます。樹齢は推定4800年! この木が芽を出した4800年前といえば、“ノアの方舟”伝説の頃。ギザの三大ピラミッドがつくられた時代(注:およそ2500年前。最近はさらに古い時代につくられたという新説もある)よりもずっと前で、日本はまだ縄文時代の真っ只中です。
二番目がイランにあるアジア最古のイトスギで、樹齢4000年~4500年。さらにイギリスのヨーロッパイチイ(樹齢3000~4000年)や、チリのアンデス山中で発見されたパタゴニアヒバ(樹齢3600年前後)が続きます。
日本の長寿の木といえば、もちろん屋久島の縄文杉(一番上の写真)や大王杉。近年の放射線炭素による年代測定によると、縄文杉は樹齢2500~2700年くらいではないかということです。
樹齢1000年を超える木は世界中にかなりの数が見つかっていますが、未発見のもののなかにはとんでもなく長寿の木がまだまだあるかもしれません。
高木は長生きで低木は比較的短命?
長生きの木を見ると、スギやヒノキ、ケヤキなど、どれも高木の傾向があります。世界一高く伸びるセコイアも非常に長寿で、カリフォルニア州のセコイア公園にそびえるジャイアントセコイアは推定樹齢2300~2700年。木の長寿ランキングベストテンに入りそうです。
逆に、低木は一般的に寿命が短いように感じられます。落葉低木のタラノキ(ウコギ科)は寿命が10年ほどで、もしかするとこのタラノキが一番短命かもしれません。常緑低木のジンチョウゲは20~30年。カキ、モモ、クリは約50年。シラカバが約70年で、ミズキやコナラが約80年。トチノキは150~200年といったところです。
一方、高木の部類ではありませんが、マツはなかなか長生きで、500~1000年といわれます。静岡県藤枝市には日蓮上人お手植えという「久遠の松」があり、本当に日蓮上人お手植えならば、確かに750年くらいは生きていることになります。そういえば、前述の世界一長寿のブリッスルコーンパインはマツ科でした。
では、サクラはどうでしょう。シダレザクラは1000年以上と相当長寿ですが、ソメイヨシノは樹齢40年前後でピークを迎え、以降は衰退傾向に向かうといいます。寿命は60~80年くらいとも。日本全国にサクラの名所は数々あれど、春が来れば未来永劫咲き誇るわけではありません。どこかのタイミングで植え替えが必要になりますね。
樹木に寿命はない?
数万年生き続ける生命体も!
木の寿命についてはいろいろな考え方がありますが、特に大径になる木については、「寿命はない」といえるかもしれません。大径の大木の場合、その太い幹の中で生きている細胞はごく一部で、多くの細胞は死んでいます。それでも、一部の細胞さえあれば樹木は生命を維持することが可能であり、その点で動物のように体内の一部機能が不全になると個体そのものが死に至るのとは違います。
ただ、移動することのできない樹木の生育は、その場の環境に依存せざるを得ません。光合成のための光、蒸散のための水が得られる環境であるかどうか、また病気や災害に遭うこともあり、その度に多くの木々が「枯死」していきます。そして枯死した木々は倒れ、やがて土壌の微生物などによって分解されていきます。
樹木は子孫を残すために多くの種子をばらまいても、そこから成木に育っていくのはごくわずかしかありません。さらに、成木のなかでもよりよい環境に恵まれたものだけが長く生き延びていくというわけで、やはり長寿の木々は、ある意味ラッキーな星の下に生まれた奇跡の存在なのでしょう。
ちなみに、スウェーデンのダラルナ地方で発見されたオウシュウトウヒの根の部分の樹齢は約9550年! とされ、根だけに限定すれば、単独の木の長寿世界一。
また、米国ユタ州の「アメリカヤマナラシの森」にある「パンド」と呼ばれる樹木は、すべて同一の根でつながっているクローンであり、森自体をひとつの生命体とするならば、何と8万年! も生き続けているのだそうです。樹木の生命力はまさに想像を絶します。
[文 ACORN編集部]