Column
ホースロギングファニチャー誕生物語【C.W.ニコルさん追悼企画その③】
今回の追悼記事はニコルさんが晩年に気持ちを注いでいた“馬”とACORN活動についてです。
「アファンの森に隣接する国有林をアファンの森財団で管理することになり、馬で伐りだした間伐材が沢山あるんだけど、無駄にしたくないので家具に出来ないかな?」とニコルさんから相談がありました。2012年3月のことです。
その時に古くから日本で行われていた馬搬の事、今では(2012年当時)岩手県遠野で2名のベテランと、それを受け継いく若者の3名しかいないこと、森に優しい林業の技術“馬搬”その復興を応援したいと。そして英国では衰退した馬搬が復興し産業として成り立っていること。馬は昔から人と共存している賢くて繊細な動物であること、などつぎつぎに熱く語っていただきニコルさんが馬に大きく関心を寄せていることを知りました。
2013年4月にはアファンの森で2回目のホースロギング(馬搬)デモンストレーションが実施され、多くの関係者が見学をしました。
早速オカムラの国産材活用専門部門である“きづくりラボ”を主体に商品化の検討が進み、アファンセンターでの家具づくり経験も踏まえて、商品としての国産木材家具を製作することになりました。売上の一部をアファンの森に還元するというオカムラでは、はじめてのドネーション付き商品です。ニコルさんを交えて構想を練りながら、社内で具現化の検討を進めました。
アファンの森から馬で伐りだされた木材の確認したところ、長年放置されていた人工林の間伐材で、木材としては良くないコンディションでした。その中で製材すれば使える材を選択して製材所へ持ち込みました。ニコルさんも製材所まで一緒に行くほどの力のいれようでした。
こうして木材づくりと並行してデザインが検討されます。強度が必要なスツールを企画したので柔らかいスギで強度を出すことが難しく、また使える木材が豊潤ではないためスチールとのハイブリッド仕様にしました。いよいよ生産がはじまり、ニコルさんが直々にオカムラの高畠事業所に来てくれました。
ホースロギングファニチャーの誕生です。当時のリリースはこちら
2013年12月にいよいよ発売となりましたが、材料の歩留まりや小ロット生産などで高価なものとなりましたが、それでもストーリーを考えれば価値あるものとご購入いただける方もいて感激しました。
ホースロギングファニチャーKURA 追悼特別販売はこちら
KURAのストーリー映像(2013年制作) ①making編 ②ニコルさんコメント編 ③馬搬関係者コメント編
しかしながら特別な家具ではなく、商品としてリーズナブルなモノも展開しなくてはと検討しているところへ、馬搬復興の活動に賛同した“みなみあいづ森林ネットワーク”が第二弾のホースロギングファニチャー・カフェテーブル製作に参画してくれました。
アファンの森に隣接する人工林の他、南会津でも馬搬で木材を伐りだしました。これにより材料も増えて、スツールほど強度が求められないカフェテーブルなのでオールスギ材で製作できました。今回も“きづくりラボ”で製品企画から設計を推進し、南会津で製材して地元の家具制作会社で製造を行い地域材活用の手法を学びました。
そして2014年12月にTROT tabelがリリースされました。おかげさまですでに完売しましたがTROT tableのストーリー映像はこちらからご覧いだだけます。
ホースロギング(馬搬)については当社サイトでUPした記事をこちらでもご覧いただけます。
その後に南会津で行われた“馬搬フェス”のデモ会場にて、馬搬で森から出されたコナラをニコルさんがみて、新しい施設にこれをテーブルにしたいと言われました。そのころニコルさんは馬を自分でも飼い、かつての日本の里山にあった馬と暮らす生活を現代によみがえらせて、懐かしい未来を実現しようとしていました。馬搬復興支援にとどまらず、ワーキングホースやホースセラピーなど馬と人の可能性を見出し、馬とともに暮らす実証をはじめようとしていたのです。ホースプロジェクトがはじまりました。
2015年にはその拠点となるホースロッジ建設の企画がはじまり、新たなホースロギングファニチャーが展開されることになりました。
文/ACORN編集部