Column
C.W.ニコル・ホースロッジ建設【C.W.ニコルさん追悼企画その④】
追悼企画③からの続きで、今回はニコルさんが馬に傾注した象徴の場所ホースロッジについてです。
ニコルさんによれば幼少のころは当たり前に一緒にいた馬。ホースロッジの計画はニコルさんが再び馬との暮らしを実践することを決めたことで始まりました。当初は日本在来馬の木曽馬を計画したそうですが、絶滅危惧種でもあり飼育も熟練を要するために将来構想となり、まずは2016年に道産子の雪丸と茶々丸がやってくることになりました。
馬の検討が進む中で、馬たちの居場所とホースマンが集う場所ホースロッジづくりも進められました。そのころ東日本大震災の被災された東松島市で“森の学校”づくりのプロジェクトが進められており、馬搬を活用した森の施設づくりをしていました。そのメンバーであった早稲田大学 建築学科 古谷誠章 教授がホースロッジの設計をすることになりました。
建設候補地の視察、“森の学校プロジェクト”でご縁のできた馬を専門とする八丸牧場の視察やホースマンへのヒアリングなどを通して、古谷誠章研究室の学生からアイデアコンペなども実施し、ホースロッジのデザインが進められました。
伝統的家屋の建築様式である曲屋をモチーフにしたそうで、少しずつ曲線を描く独特のデザインです。
建設場所も紆余曲折ありながら、ニコルさんが畑として使用していた土地を転用することが決まり、地鎮祭を経ていよいよ建設に向け着手されました。
ニコル氏も自ら敷地の整備を手伝いながら建築は進みました。国産材木造で馬房の壁面には南会津で馬搬により切り出された材が使われています。
そんな中で居住エリアはホースマンが集う素敵なエリアにしたいと、ニコルさんのこだわりインテリアメモが送られてきました。そこでオカムラのきづくりラボ、空間デザインチームも参加しニコルさんの想いを実現するインテリアをつくり上げるため、短期間で関係者の打ち合わせが進められました。
中でも特にニコルさんが拘っていたのがストーブとテーブルです。少量の薪で燃焼時間も長く、広い範囲を温められてクッキングもできるもの。そしてテーブルはストーリーのあるホースロギングファニチャー。 南会津の馬搬フェスで曳きだされたコナラの木を活用したいと。
コナラ材は木の暴れが大きくて家具にはほとんど用いない材料なのですがあえてチャレンジしました。広葉樹は1年を通して乾燥させた方が暴れも落ち着くと言われていますが、ホースロッジの建設スケジュールに合わせて人工乾燥で短期間対応しました。(後にひび割れも発生しましたがリペアして蘇っています。)
ホースロギングファニチャー製作の詳細はこちら / 映像はこちら。
壁面の棚を関係者によるワークショップで作り上げる事になりました。アファンの森と隣接する人工林から馬搬で伐りだした原木を、簡易製材機で板材にして自然乾燥させました。それを棚板に加工して壁面に設置しました。金属フレーム以外はアファンの森エリアの中でつくりあげた、まさに地産地消です。
この取り組みはWoodLand WoodWorkプログラムへと進化しました。
こうして2016年7月に無事完成したC.W.ニコル・ホースロッジには、2014年に故人となられた英国馬搬復興に尽力された英国馬搬協会会長のダグジョイナー氏を偲ぶプレートも玄関口につけられました。
この素敵な空間へオカムラのACORN研修でも毎回お邪魔させていただいています。
そしてニコルさんが思いを馳せたその遺志はアファンホースプロジェクトとして受けつがれ、雪丸・茶々丸は元気よくのびのびとトレーニングを積み重ねプログラムが展開されています。
文/ACORN編集部