Column
ニコルさんの森の学校づくり【C.W.ニコルさん追悼企画その⑤】
ACORN活動を開始してまもなく発生した東日本大震災。そこからニコルさんがはじめたアファンの森震災復興プロジェクト「森の学校」づくりについてのお話しです。
2010年のACORN活動の発足当初は国産木材の活用を中心に進めていましたが、2011年3月11日に東日本大震災が発生。オカムラも当時国産材調達で連携していた宮城県の石巻森林組合からの国産材MDFボードが工場の被害により調達できなくなりました。また岩手県釜石市にあるオカムラの関連工場NSオカムラも津波による甚大な被害をうけました。
この大震災で日本国内が大混乱した状況の中、ニコルさんは森の力を信じて被災地の子供たちの心のケアをはじめていたのです。そしてその申し出に唯一手を挙げた東松島市。森で癒された子供たちをみて、津波の被害で使えなくなった小学校を新たに高台へ移転して統廃合する計画は自然を生かした教育の場にしたいと。
2012年に“森の学校”をつくる森の学校プロジェクトが立ち上がりました。オカムラは冊子の記事取材でこの事を知り、教育に関わるメンバーがACORN活動として参加することになりました。
東松島市で計画されていた小学校は公立で、しかも近隣には自衛隊の松島基地もあり、具体的なデザインをするためにはいくつものハードルがありました。
“森の学校“をつくるために、自治体の計画には無かったアファンの森財団による生物調査からはじまり、自治体関係者や教育委員会、支援企業、地域住民と様々な討議が繰り返されました。
ニコルさんも精力的に現地へ訪れて、子供から教育関係者などさまざまな人の話を聞き、自然の力を説いてくださり私たちもたいへん勉強になりました。余談ですが、訪問の際に良く訪れたお店のメニューにはニコルさんへのお礼コメントが掲載されていました。
プロジェクトで検討を進める中、森の学校の一部となる復興の森づくりが進められ、当時仮設校舎で学ぶ子供たちの為に、フィールド学習のプログラムも多数行われて、随行したプロジェクトメンバーの私たちも多くの事を学びました。
森の学校プロジェクトについては以前記事にしていますので、こちらを参考にしてください。
そして震災当時に小学生となり、ずっと仮設校舎で学んできた小学校6年生を、卒業までの少しの期間だけでも新しい校舎で学んでもらおうと、関係者の努力により2017年の1月3学期の始業式を迎えられるように、森の学校である「宮野森小学校」の新校舎が2016年12月に完成しました。そして3月には卒業式が行われ、ニコルさんへ子供たちが感謝のことばと校歌を歌ってくれたことは感動的でした。
今でも定期的な森の授業は続けられていますが、ニコルさんの想いが詰まった復興の森を見届けてゆく活動を兼ねて、この5月に社員研修を実施予定でしたが新型コロナ騒動で延期になっています。
ACORN活動の立ち上がり当初は森林再生や国産木材活用を中心に据えていましたが、このプロジェクトに関わる事で、森が教育の場としても、人の心に対しても有用なことを学び、教育や地域活性とACORN活動コンテンツの幅がひろがりました。
ニコルさんの監修のもと森の学校プロジェクトのメンバーであった早稲田大学 古谷誠章教授とその研究室学生たちが実務部隊として、復興の森に“うまのひづめ展望デッキ”や“サウンドシェルター”を馬搬の技術を活用しながらつくりあげた経験は、前回記事のホースロッジ建設や、ACORN活動のワークショップWoodLand WoodWorkにも生かされています。
この自然を生かした教育の場づくりは、被災地に限らず全国に展開するべきものだと、立ち上がったのが森が学校計画産学協同研究会です。
文/ACORN編集部