Column

豊かな日本の未来をめざせ!ニコルさんの教育【C.W.ニコルさん追悼企画その⑥】

今回はニコルさんとの活動を通して、これからも遺志を繋いでゆく活動のご紹介となります。

 前回の記事でお話しした“森の学校”づくりの活動で、自然の中で生き生きしている子供たちの活動をみていると、自然と教育は切り離せないことなのだと実感しました。

 “森の学校”づくりを進めているときに、ニコルさんが良く語られていたお話に、自然欠乏症候群(Nature Deficiency Syndrome)という言葉が良く出てきました。

 それは自然環境に触れていない子どもたちの多くは、集中できない、我慢ができない、我儘をいう、すぐキレる、といった症状がみられ、その結果、自分の感情を言葉で伝えられない、一緒に遊べない、物を分け合うことができなくなり問題行動を起こす子どもが増えているという現象で、当時は海外で話題になっていたそうです。

 ニコルさんはアファンの森で里山再生を実践しながら、虐待を受けた子供たちや障害を持つ子供たちを招き、森で遊んでもらい心のケアをする5センスプロジェクトを長年展開していました。その経験から東日本大震災が発生した際に被災地の子供たちも森に招き、それがきっかけで生まれた“森の学校”づくりが始まりました。

 これは被災地に限らず、およそ今の日本のすべての学校での教育にも大切なことではないかと、アファンの森財団を中心に早稲田大学の古谷誠章教授が座長で「森が学校」を産学で研究するチームが発足しオカムラも参加しました。 

研究会の様子

 当時は“森の学校”プロジェクトと並行して復興の森での馬のひづめ展望デッキやサウンドシェルターの制作などを行い研究や視察を進めましたが、現在は早稲田大学の産学協同研究会として運営されています。

東松島市“森の学校”づくりに参加

 産学協同研究会では、都心から郊外、中山間地域までそれぞれの地域で、その特性に合わせた自然を生かした教育の場としての「森が学校」の研究・提案を実施しています。全国の里山や森林、伝統的な建築などの視察、自治体との連携などを行いながら、それらを活かす研究を続けて、プロトタイプモデルもつくりあげています。ニコルさんのホースロッジづくりも重要な研究素材となりました。

自然教育を実践している幼稚園や小学校の視察
全国各地の参考になる場所施設の視察
シンポジウム開催やイベントなどでの対外発表と、都内小学校で森が学校授業実施。

 ニコルさんは東松島市に“森の学校”もできあがりすこし落ち着いた時に「これから僕は子供たちのため、未来につながる事をしていきたいと」と話されていました。(大人たちは言うことを聞いてくれないから諦めたとも・・・)

 ニコルさんが愛した日本の自然、そしてひとが生きていく中で自然がとても重要な要素であること。これを次の世代へ伝える事が責務と考えました。自然を生かした教育は、健全でサスティナブルな社会を実現する手法でもあるということを広く世間に伝えることもこの研究会の役割です。

 この研究会に興味があり参加を希望される方はこちらへお問い合わせください。

早稲田大学 古谷誠章研究室:info@furuya.arch.waseda.ac.jp

 

文/ACORN編集部

 

【C.W.ニコル氏追悼企画】

 追悼記事①『ニコルさんとACORN活動のはじまり』はこちら 

 追悼記事②『オカムラのACORN活動』はこちら 

 追悼記事③『ホースロギングファニチャー誕生物語』はこちら 

 追悼記事④『C.W.ニコル・ホースロッジ建設』はこちら 

 追悼記事⑤『ニコルさんの森の学校づくり』はこちら

 追悼特別公開の番組はこちら(2020年7月20日まで)

TOP