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木で“ものづくり” 乾燥編【国産材活用シリーズ】

 木が木材として使えるようになるには、さまざまな工程を経る事になります。

 前回は木の伐採から製材までのお話しをしましたが、今回は主に家具や建材に活用することを想定した木材の乾燥についてのお話しです。

 丸太から自然乾燥そして製材(だら挽き、大割)を経て、ここから用途に応じた角材や板材に製材(小割)してさらに乾燥させます。

 乾燥技術が発達した近年では人工乾燥の技術も進み、生産効率の面では短期間に乾燥ができるようになりました。また天然乾燥では成しえない含水率まで水分を抜く事ができます。これにより木材としての精度もあがります。自然乾燥・人工乾燥にはそれぞれ良さがあり製材所がそれぞれ独自の技術や工夫をして安定した木材を生産しています。

さまざまな木材乾燥用の窯

 そして木を木材として使う場合、この乾燥プロセスが品質に大きく関わることになります。

 伐採前の立ち木は樹種にもよりますがスギやヒノキなどは含水率150%~200%と、とても多くの水分を含んでおり自然乾燥だけでは含水率15~20%までしか落とせません。

 建材として使用する場合にはこの程度の含水率でも大丈夫ですが、家具用に使う木材は冬場の非常に乾燥している室内でも、反りや割れ等の不具合を起こしにくくするため6~8%程度まで含水率を落とす必要があります。

含水率を計測中。数か所を計測し含水率を判定します。

 それではどうして木が木材となると、反ったり、割れたりするのでしょうか。

 それは反りも割れも木材に含まれる水分に関係しているからです。生育中の樹木は非常に多くの水分を全体に含んでいます。それが伐採され水分吸収が無くなり水分が抜けていくため、水分を含んでいた繊維部分が収縮します。

 生育状況によって繊維収縮方向が違うため、水分が多かった方に引っ張られることで、この引っ張りに堪えられなかった部分には割れが生じます。

 木でものを作るときには乾燥によって水分が抜けて繊維の収縮が納まった状態で木材を使用することが大切です。

 前回説明した木取りにも影響されます。柾目は繊維方向が一定なので、殆ど割れたり反ったりしませんが板目や追い柾目は繊維方向が一定していないので、反りや割れが出やすくなります。作るもの、使う場所により板材を選ぶことも重要ですね。

 どの木材でも乾燥によって水分が抜けて繊維の収縮が治まった状態になれば反りや割れは少なくなります。

 国産材活用で特に多く生産している樹種スギ・ヒノキは古くから建材用に活用されていました。そのため建築用木材としての乾燥技術などは進んでいますが、家具材にも活用することは比較的最近のことなので、家具用乾燥技術をもつところは限られています。

 近年の建築物は密閉度も高く、特にオフィスビルなどはエアーコンディションがしっかりしていて乾燥していることが多いので、木製品を活用する場合には製作時にしっかりとした乾燥対策が必要となります。

 国産材を活用してモノをつくるには入り口段階の“乾燥“に気を配る事も、永く木製品を使い続ける為にも重要なことです。

参考:建築用材はこれらの乾燥状況によって、グリーン材(未乾燥の材)、AD材(天然乾燥材)、KD材(人工乾燥材・D25(含水率25%以下)、D20(含水率20%以下)、D15(含水率15%以下))と区分けされています。

文:ACORN編集部・きづくりラボ

①伐採~製材編はこちら

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